2007-08-25

2007-08 痛みの科学 

 痛み(pain)というのは周囲の人に理解され難く、その為、実際の痛みに加え、精神的にも苦しむ人も多いという。母が、色んな痛みで凄くしんどくだるいのに、来る人来る人に元気そうで安心したといわれ、誰もこの痛みは分かってもらえないらしいとぼやいていた事を思い出す。私もかなり理解していたつもりで、頭で随分理解しようと努めていたが、今リウマチ様関節痛(rheumatoid arthralgia)になってみて初めて母の痛みや辛さの一端を実体験として知る事となった。

 私もまた、いつも元気そうだと皆から言われ、心配かけずに済んでいる事は喜ばしいと思っている。そして私の関節痛(arthralgia)も、本物のリウマチ(rheumatism)等で苦しんでいる人とは比べ物にならない位軽いだろうし、痛みの進行も最近止まっている様なので、ありがたい事だと思っている。しかしこんな関節痛でさえ、なんとも痛くしんどく、ずっと持続しており、最近では飲み薬の痛み止めも余り効かなくなってきている。しかしこの痛みというのは、血が出る訳でもなく、腫れ上がったり熱を持ったりしている訳でもなく、あくまでも本人の感覚で、外から見ても分からないものである。しかし怠けていると見られたのか、さっさと引っ越して復職せよといった事を退院後、さほど日が経っていない時期にいわれた事は、非常なショックとして心に突き刺さっている。

 ところで昨夜、NHK教育の『サイエンスZERO』【解明進む痛みの科学】再放送を見た。前回偶然少しだけ見て気になっていた番組である。ガン(cancer)等の疼痛にモルヒネ(morphine)を使用しても中毒(poisoning)になり難いという番組の宣伝が気になっていた。

 将来、ガンでモルヒネのお世話にはならない事を祈りつつも、知識として情報としてモルヒネがどんな物なのか知る事はいい事だと思う。ちょっと番組の内容を自分なりに箇条書きで書き留めておく。

★ 痛み止めには消炎鎮痛薬、局所麻酔薬(local anesthetic)、麻薬(narcotic)の大きく分けて3種類あり、それぞれ効き方に特徴がある。

・ 消炎鎮痛薬は痛み物質・痛み(痛い所そのもの)に直接効く。

・ 局所麻酔薬は神経に直接作用して、痛みを感じさせなくする。

・ モルヒネ等の麻薬は脳で作用し、痛みが末梢神経(peripheral nerve)から中枢神経(central nervous system)へ伝わる時の痛みの信号をブロックする。

★ 何故痛みがあるとモルヒネ中毒になり難いのかという実験と、説明は次の通りだった(星薬科大学薬品毒性学教室鈴木勉教授、成田年准教)。

・ 健康なラットにモルヒネを注射すると、快楽物質であるドーパミン(dopamine)の量が倍に増えるのだが、脚に痛みを持つラットではドーパミンの量はそれ程増えないという実験結果がある為、痛みがあるとモルヒネ中毒になり難いと考えられる。

・ 脳の中には快楽物質であるドーパミンを分泌するドーパミン神経があるのだが、痛みの無い状態でモルヒネを投与し続けると、モルヒネはドーパミン神経の受容体(レセプター:receptor)を活性化する為、快楽物質ドーパミンの量がどんどん増え続ける。脳内にドーパミンが極端に多い状態が長引くと依存が生じ、その結果、いずれモルヒネ中毒になってしまう。

・ 痛みを感じると大脳で快楽物質であるドーパミンの分泌が抑制される。これは、痛みがある状態の時、ドーパミン神経の活性を抑える別の受容体、即ちドーパミン抑制受容体に、痛みによって出る物質が嵌まる為、ドーパミンの分泌量は抑えられる事になる。その一方でモルヒネは、痛みを抑える受容体に作用し、痛みが神経に伝わらない様にする。この為、痛みがある場合モルヒネを投与しても中毒になり難く、しかも痛みを抑える事が出来る。

・ 痛みがある時にはモルヒネを生体が欲しており、それを十分量補う事によって痛みを普通に近づける事が出来る、と考えている。

★ モルヒネで痛みそのものを抑えながら治療をすると、ガンそのものの症状が軽くなる事も見られるという。


 番組で気になる部分のまとめは以上である。痛みの仕組みは大体分かった。しかし問題は麻薬の処方(prescription)の仕方であろう。

 母がかつて話していたが、モルヒネは投与の仕方も結構難しいという。そして意外とその専門医は少なく、モルヒネの本当に効率的な使い方を知らない医者が多いとも言っていた。母は生前、もしガン等で入院する事があったら痛み止めのモルヒネを使ってほしいとも言っていたが、末期ガンの時はモルヒネの投与量が難しいのかもしれないが、母の場合、私が外泊許可を得て見舞った時には「よく効かなく、痛い」といっていたのと、効き過ぎてか(?)ずっと眠り続けている場面しかなかった。

  私の場合、骨髄移植(bone marrow transplantation;BMT)後、粘膜やその他の激痛等にモルヒネの点滴があったのだが、中毒になるといけないと、最小限量しか点滴されず、痛みに効いているとは感じられなかった。ところがそのモルヒネをもうそろそろ中毒にならない為にも止める時期だといって急に止められた。すると、全身更にひどい痛みや形容し難い苦痛に苦しむ様になった。どうやら効いていないと思っていたモルヒネがそれでも効いていたらしい。それに加え、先生からはその痛みの原因の一つにモルヒネの離脱症状(withdrawal symptom)もあるかもしれない、とも言われた。そういう可能性があると分かっているのならば、いきなり止めるのではなく、徐々に減量していって欲しかったと思ったのだが。。。 ここら辺に先生と患者の間のギャップを感じる。なかなか理想通りに物事はいかないものである。

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