2008-02-14

2008/02/13 万波医師の病気腎移植について1

 病気腎移植、初めてこの言葉を聞いたのは入院中(2006年暮れ)のテレビのニュースであった。何でも、病気で切除した腎臓を、腎臓の病気で移植を待つ他の患者(patient)に移植(transplantation)したのだという。それも1例や2例どころではなく、相当数に上り、移植した腎臓の中には癌(cancer)だったものも含まれるという衝撃的な内容であった。

 それまで、病気の臓器移植なんて聞いた事も無かったし、実際そういう事が可能なのかどうかを含め、さっぱり理解出来なかった。そして連日ニュース(というか、ワイドショー)ではこの事件をセンセーショナルに取り上げ、この移植を行った万波誠医師の事を、移植学会に正式な手続きも取らず未承認の医療行為をした医者だとか、患者を実験台にして病気の腎臓を移植したのではないかといった様な(悪や黒いイメージの)内容で報じたてた。カメラに追い回される万波医師は顔に困惑の色を浮かべ、黙して語らずであった。その映像を見て、一体この医師はどういう人なのだろうと不思議な印象を受けた。名誉やお金儲けの為だけで無謀な手術を行なったという人には感じられなかった。

 その後、この万波医師のニュースは確か去年、海外の医学学会で病腎移植の結果を発表するというのがあって、ホォー、やはり悪い人ではなかったのかな、と何となく納得した覚えがある。しかし、病気腎移植という内容については、本当に大丈夫なのかを理解させてくれる材料は未だ(私の中には)無かった。そもそも腎移植に使えるのなら、わざわざ取り出さなくても(摘出しなくても)、その腎臓の持主の中で病変部位を切除するだけで十分だったのではないか、という単純な疑問があった。愛媛の宇和島徳洲会病院、普段脚光を浴びる事も無かったこの病院で、一体何が起こったのか?

 私の疑問に対する答えは、ある雑誌によってもたらされた。それは新潟から発信される『ミ誌』という、非常にユニークな科学季刊誌である。そこには、たとえ移植された腎臓が、癌の為摘出された腎臓だったとしても、移植された人の中ではその癌細胞が再発する可能性は低いと書かれていた。私は専門家でもないので、うまく説明できないが、私なりに(長くなるので)少しだけまとめてみると、次の様になる。

 その解説者によると、癌細胞は遺伝子異常により、抗原(antigen)性が正常細胞とは大きく違っている為、特殊な型を除いて、臓器移植に用いても再発(recidivation、recurrence)・転移(metastasis)しない筈であるという、病理学的予測が立つと述べられていた。また癌でなく、ネフローゼ(nephrosis)を起こした病気の腎臓でも、その腎臓の持主(ここではドナー(donor:提供者)にあたる)の中では機能しなくなっているのに、移植された別人の体内(新しい環境――ここではレシピエント(recipient:受容体、被移植者)にあたる)では、その病気を起こす因子が無い為か、腎臓が正常に機能し始めるという。つまり病気の腎臓も適切な環境下におくと(移植すると)、自己修復機能が働いて正常に動き出すという。これが、何故病気腎臓が移植しても大丈夫なのかという事を説明していた。

 これを読んで、万波医師という人は、なんと画期的な移植治療を発見(開拓)されたのだと感心すると共に、何故世の流れは、世界初・日本発のこの偉業を称えずに、バッシングする方向に向かうのだろうかという思いが湧いてきた。せめて同業のお医者さん達はもっと万波医師を擁護してもいいと思えるのに、その動きも無かった(というか、一般人の私には殆んど耳に入らなかった)。もしかして、T大でもK大でもなく、その他有名な医大でもない、弱小病院(宇和島病院さま、失礼!) 発の大発見というのをやっかんでいるのであろうか?  (こういう嫉妬(例えば『丸山ワクチン』の事等が思い浮かぶが)は医学の世界に限らず、ままある事だとも想像してしまうが。)

  万波医師の病腎移植に未だ否定的立場をとる日本移植学会やマスコミに対し、『ミ誌』では、今まで廃棄されてしまっていた臓器のリサイクル、という新しい道を拓いた万波医師の偉業を称え、全面的に万波医師を応援している。そして、最近では、『病腎移植』の代わりに、『レストア腎移植(restore kidney transplant)』という言葉が提案されているそうで、その言葉でこの医術の説明がなされている。これは“修復された腎臓の移植”という意味である。確かに、一般人の私が、病腎移植と聞くと、移植されても病気のままの腎臓というイメージもあるので、レストア腎移植の方がはるかに良いと思う。実際移植後、ちゃんと機能してくれるのだから…… 早く世間一般にもこの言葉が浸透すれば、この病腎移植の誤ったイメージも変わってくるのではないかと思う。とにかく、マスコミの中にはスキャンダル的な扱いをするのではなく、この医術の正しい知識を知らせる機関がもっとあってもいいのではないかと思う。
参考:次回『2008/02/13 万波医師の病気腎移植について2

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