2009-06-30

2009/06/22 (月) 通院記録2 前回(5/18)の蛋白分画の結果

 前回で4回目になる、5月18日の蛋白分画(protein demarcation)の結果について、また先生にグラフ付きの検査結果を印刷して貰った。相変わらず、グラフに大きな変化は無く、ノッチ(notch)の位置(▼マークの所)も大体同じで、γの辺りの山に付いている。そしてお決まりの様に、【βγグロブリン位にバンドが認められます】とのコメントがある(写真)。

 先生は「また出ていますね…、やっぱりあるのかなぁ~」と、患者にとってはどう理解したらいいのかさっぱり分からない、漠然とした言葉を呟かれる。

 蛋白分画の検査結果は、γグロブリン分画だけはいつも基準値よりやや高めの値だが、その他の分画は、これまたいつも、基準値内かどれかがやや外れる程度の値なのだが、何故か【βγ-グロブリン位にバンドが見られます】というコメントが必ず記されている。5月18日の結果もまた同様。

 先生は、(血中の鉄分の量を見る)フェリチン(ferritin)の値も下がってきているのに、なかなか肝機能も正常になりませんね、とも言われ、やおら、今回はどれだけアルコールを飲んだのかと訊かれる。前回の通院日と5/27の2回だと手帳を調べて報告すると、週に1回位飲んでいる感じですかね、と言われるので、もう一度、この5週間は2日間だけ好きなだけ飲んだと伝える。

 「異形リンパ球がちょくちょく出ているのもちょっと気になりますね」とも言われる。「異型リンパ球は最近出ていませんよ」というと、「そうでしたか?」と過去のデータを調べて確認されたが、なんだかすっきりしない、という顔をされておられるので、「確か、異型リンパ球は出ても大して気にしなくても良かったのではないのですか?」と訊いてみると、「そうですね、1%位なら気にしなくてもいい範囲です」と先生(今回も1%)。

 時々この異型リンパ球(atypical lymphocyte)等が出現したり、Poikilocytosis(奇形赤血球症、変形赤血球症)とかが陽性(positive)に出たりする事があるが、私の方からその事を訊かない限り、別段先生から何か言われる事も説明される事も無かった。今回は先生の方から異型リンパ球が出ている事を言われる。先生が気になされるという事は、肝機能検査値がなかなか正常化しない事と、蛋白分画でノッチが出ている事と関連があるかもしれない。

 次回の血液検査には、またフェリチンの検査も加えて、様子を見てみましょうという事になる。蛋白分画は毎月入れる事になったが、この検査は結果が出る迄に丸1日以上かかる検査の為、今日の結果はまた次回通院時に、となる。

【蛋白分画の結果】
2009/05/18:
・ ALB分画(画像アリ) 59.6% [ 60.2~71.4 ]、
・ α1分画 2.5% [ 1.9~3.2 ]、
・ α2分画 7.0% [ 5.8~9.6 ]、
・ β分画 7.3% [ 7.0~10.5 ]、
・ γ分画 23.6% [ 10.6~20.5 ]、
・ A/G比 1.5 [ 1.5~2.5 ] 
※ コメント:βγグロブリン位にバンドあり。
※ ALBとはアルブミン(albumin)の事。
※ A/G比とは、アルブミンとグロブリンの比率(albumin-globulin ratio〈A/G ratio〉)
※ [ ]内はこれら分画の正常値であるが、検査機関や病院によって少しずつ違っている。
※ 関連項目:ラベル【蛋白分画検査

2009-06-28

2009/06/22 (月) 通院記録1 今度は頸に発疹

 この5週間の体調は、おおむねいつも通りではあるが、ちょっと疲労(fatigue)が溜まっている感じだ。血圧(blood pressure)の上の方は82-89又は93-101の間、下は58-69の間が多く、ここ数カ月で全体に少しずつ上昇してきている。発熱(pyrexia、fever)無し。

 ほぼ毎日起こる症状は、だるい・しんどい、のど・頸・背中・腰・指等の関節痛、手足の攣りかこむら返り(twist、leg cramp)のいずれかが時にきつく起こる、軽い頭痛(headache)・喉と鼻の奥に痰の様なものが絡む等である。特に背中がだる痛い日が続いていて辛い(頸も)。また肘と手指全体がきつくこわばる日が増え、全身の関節痛(arthralgia)や筋肉痛(myalgia)の日も増えている。
※ 全体に症状が悪化傾向にあるのは、社会復帰へ向けてのリハビリ(rehabilitation)(月水金)の他に、もっと体力を付ける為にと、6月に入ってから休みの日も体を動かす様にした(主に、ずっと放置していた引っ越し荷物の片づけ)のが一因なのかもしれない。とにかく疲労蓄積がひどいので、月水金以外は出来るだけ体を休めた方がいいのかもしれないと感じ始めている。まだそこまで体力が追い付いていないみたいで、少し情けなくすら感じている。

 その他としては、最近軟便(soft stool)傾向になった為、便を軟らかくする効果があるマグミット錠(Magmitt)の服用を6/16より中止して様子を見ているのだが、改善せず、時に下痢(diarrhea)に近い時もある。6月頃より、ムカムカする日が少し増加している。また、頸後ろにGVHD(移植片対宿主病;graft-versus-host disease)と思われる発疹(exanthema;eruption)が出ているのを6/19に確認する。
※ 頸後ろは膏薬(plaster)の貼り過ぎなのか、かぶれ気味だった為、しばらく貼るのを我慢していたが、余り変わらず。また膏薬を貼っているが、6/19に発疹が増えていると感じたので、デジカメで撮ってみたら、膏薬を貼っていた部分以外にも、うなじの毛の生え際にも出現しているのを確認した(写真は頸後ろのかぶれ跡と左うなじ生え際に新しく出現した発疹部分)。
※ これは昨年夏に急に背腹に出現した発疹(先生にはGVHDだろうと言われた)に似ているので、今回の頸の発疹もGVHDではないかと思った。但し、少し痒い程度で、去年の背腹ほど痒くはない。
※ 昨年の参考記事は08/09/2108/09/22等。

 改善した所は、最近、膿栓(plug of pus)が出てこなくなった点だろうか。そうそう、前歯中央左上の歯肉にチョンとあった小さな白い点(白板症(leukoplakia)かもしれないと言われていたので少し心配していた)が、ついに消失してくれたのが、少し嬉しい(この歯茎の白い点の話は、もっと大きくなる様だったら報告しようと思っていたので、今迄先生には話していない)。

 さて、診察の順番が来た。今回は、非常に体がしんどく辛い事を切々と訴えてみる。鼻や喉奥に痰が絡む件に関しては、副鼻腔炎(sinusitis)かもしれませんね、と言われる。鼻やのど、ムカムカに、軟便傾向と、全て粘膜系に関連している(良く粘膜系がやられると聞いている)ので、その点を何か言われるかと思ったが、あとに続きは何も無かった。頸の後ろに出来た発疹については「余り出ていませんね」と言われるので、デジカメで撮った写真も見て貰う。去年背腹に出た発疹と同じに思うのだがというと、そうかもしれないが、大した事無いから大丈夫でしょうとの事。

 一通り現在の体調を伝えてから、今日の血液検査の結果を見せて貰った。余りにしんどく辛い日が多いので、もしかして悪化しているかもしれないと思っていたのだが、肝機能検査値は殆んど変化無しであった。低くなったとはいえ、基準値よりはやや高めの状態がずっと続いている事になる。そして横ばいに近いと言っても、GOTがまた+1だけ上昇している。

 実は最近、漠然とだが、このまま またじりじりと増加(肝機能検査値の悪化)が始まるのではないかという悪い予感がして来ている。今日もしGOP(AST)とGPT(ALT)の両方が増加していたら、先生にこの不安を伝えてみようかな、と思っていたのだが、GPTは前回より1だけ減っていたので、やはり気長に様子を見た方がいいのかもしれないと思い、先生に伝えるのは止めにする。

 疲れがひどいので、先生の言われた様に、市販のマルチビタミンをリハビリの月水金と飲んでみているが効かない、アリナミン(Alinamin)の場合はとても良く効くと、暗にアリナミンを処方して貰えないかと伝えてみる。「やはり、少しアルコールが入っているせいじゃないですか?」と先生。何を言われているのか分からず、しばし悩んでしまったが、どうやらドリンク剤の事を言っておられると気付き、「アリナミンF錠です」と私。「ああ、錠剤の方ですか……。いっそのこと薬を止めてしまうという方法もありますが」と先生。「?? 薬を止める?!」「はい、痛み止めを一切止めてしまうんです。やめちゃいましょうか。」ただでさえ最近痛みがひどくなってきているのに、今、痛み止めを中止されたら堪らない。「そんな事になったら、家にある手持ちの痛み止めを、片っ端から飲み始めちゃいます」と言って、痛み止めをやめない様にお願いするはめになってしまう。私の今の症状(訴え)にアリナミンを処方(prescription)する事は出来ないお薬と言われた事があるのだが、あれは本当に良く効くので、一緒に処方して欲しい気持ちが一杯なのだが。。。

 肝機能値(liver function)が完全に正常値にならないので、今回も主要なお薬の変更は無しで様子を見る事になる。痛い所に貼っている膏薬については2種類処方して貰っているが、貼るタイプ以外に、市販のアンメルツヨコヨコみたいに、液状の塗るタイプの鎮痛消炎剤は無いのかと訊いてみる。

 ゼリー状のものなら、患部に塗るタイプのものを処方された事があるのだが、塗った手指がぬるぬるし、それを洗い流すのも結構大変(手指にまとわりついて簡単に落ちない)なので、つい使うのが億劫になってしまって、全部使い切らずに残ってしまっている。かつて(入院以前)愛用していたアンメルツヨコヨコの類は、容器から直接痛い所に塗れるし簡単だ。特に頸等の場合、膏薬なら外出時は服からはみ出して見えない様に貼ったりしなければならないので、本当に痛い所を全部覆って貼る事が出来なくなるが、塗るタイプならその心配がないし、いつでも痛みがきつくなったらすぐ塗れるので便利である。

 先生はこの液状タイプを処方された事が無いらしく、どの薬がそれに相当するのか分からないといって、PCの処方画面を見ておられる。「そこの“外皮用……”って所にあるんじゃないでしょうか」と言って、そのタブをクリックして貰った。すると幾つか鎮痛消炎剤の薬名がリストアップされた画面が出てきた。どれがいいのかよく分からないのだが、『インテバン外用液50ml』と書いてあるのをみつけ、それをお願いする事にした。50mlと書いてあるのだから、多分ゼリー状ではないと信じて、取り敢えず1本処方して貰った。確かクリームタイプのインテバン(inteban)というのを昔使った記憶があるし、名前からして、インドメタシン(indomethacin)配合の筈だから、良く効きそうな気がする。

 次回の予約を取ってから、いつもの様に院外の薬局で薬を受け取る。早速、処方して貰ったインテバンを見てみると、希望していたタイプの液状タイプのものだった。ちょっと嬉しく、まだそれを塗った訳でもないのだが、疲れが少しだけ取れた感じがした。

【血液検査の結果】6/22:
WBC(白血球数) 4.3、HGB(ヘモグロビン) 12.1、PLT(血小板数) 170、
GOT(AST) 49(高)、GPT(ALT) 40(高)、γ-GTP 23、LDH 225、AMY 130(高)、T-cho 234(高)

2009-06-07

2009/06/07(日) ビブリオ バルニフィカス Vibrio vulnificus

 先日、『たけしのアンビリーバボー』というTVを見た。

 題目は「人類を襲う未知の病原菌」というもので、前日に東南アジアから帰国したという患者が、下痢(diarrhea)・嘔吐(vomiting;emesis)と微熱(low grade fever;subfever)、脚の痛みも訴えているという症状だったのが、間もなく激しい痛みに変わり、原因不明のまま、みるみる脚が壊死(ネクローシス:necrosis)を起こし始め、命を救う為に脚を緊急手術で切断しようとしたが間に合わずに、最初の来院から46時間後に死亡したという症例から始まった。他にも2つ、日本で釣りをしていた男性と、入院患者が同様な死を辿ったという症例が紹介されていた。

 これだけなら、『怖い病気もあるものだな』という事で終わる所だったのだが、この3人がそれぞれ発症直前に刺身を食べていたという点と、肝疾患を持っていたという共通点があったというのである。これを聞くともう目が離せなくなってしまった。何せ自分は、なんとか正常値近くになったとはいえ、肝機能検査値がなかなか基準値以内にならない状態だし、未だ食事制限があり、最近主治医に「もうそろそろ刺身等の生ものを食べても大丈夫でしょうかね?」等と訊いていたからだ。結局刺身はもうしばらく食べるのは止める事にしたのだが……

 番組では、この死に至る怖い症状を起こす原因は、ビブリオ バルニフィカス(Vibrio vulnificus)と紹介されていた。これは腸炎ビブリオ(ビブリオ パラヘモリティカス:Vibrio parahaemolyticus)やコレラ菌(cholera vibrio)の仲間で、増殖が速く、感染(infection)すると24時間以内には発病し、72時間以内に手足が壊死(ネクローシス:necrosis)を起こして死亡してしまい、死亡率はなんと6割だとか。またこの菌は鉄過剰状態で増殖し易くなるという性質があるそうだ。余り耳にした事の無いこの菌、実は普通に魚介類に良く見つかる菌の一つの様で、ある年の10ヶ月間に、スーパーで購入した魚介類に、この菌の有無を調べたという検査で、16%位も付着していたという結果が出たという。

 この番組で紹介された3人はいずれも肝臓を患っていた。そして刺身を食べたのが原因で感染したと思われるのだが、これら患者と共に刺身を食べた人達は感染どころか、下痢も起こさなかった。一体どこで運命が分けられたのだろうか?

 この菌、どういう人に感染のリスク(risk)が高いかというと、肝機能障害、血清鉄過剰状態で劇症的(fulminant)な症状が現われ、糖尿病(diabetes mellitus)・大量にアルコールを飲む人・免疫疾患の人も要注意という。また、健康な人でも軽い下痢(diarrhea)・腹痛(abdominal pain;abdominalgia)が起こる事があるという。特に、肝疾患になると体内の鉄が過剰状態になる事がある為、体に鉄が溜りやすいとされる男性に感染例が多かったとも言っている。

 自分は免疫抑制剤(immunosuppressant)を飲んでいるので、免疫力(immunity;immunization)が弱く、易感染状態(infectible)。そして肝機能(liver function)も不安定で、軽い肝機能障害(hepatopathy)が続いている。またそれが原因と思われる血清鉄(serum iron)は随分減ってきたとはいえ、鉄過剰状態。ハイリスク、ど真ん中ではないか、と少しぞっとしてしまった。

 現在の自分の状態では、刺身等の生ものを食べてももう大丈夫かもしれないが、免疫バランスを崩してしまう危険性もある、と主治医から説明を受けていたが(参考:『2009年03月09日(月) 通院記録 生食について』)、ビブリオバルニフィカスという、知名度の低い(しかし、結構普通に存在する)菌によるこんな怖い感染症にかかるリスクもあると知ってしまったら、免疫抑制剤服用中は、刺身は絶対食べない方が無難だと、改めて考えさせられた番組だった。

 最後に、この『たけしのアンビリーバボー』のHPに掲載された放送内容の記事は、1ケ月分しか保存されていない様なので、以下に、今回参考にした「人類を襲う未知の病原菌」という記事全文を転載させて頂く(写真は省略)。
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『たけしのアンビリーバボー』の「人類を襲う未知の病原菌」(2009年5月21日放送分)。
1990年11月、千葉県 旭中央病院の内科の救急外来に1人の患者がやって来た。 Aさんは前日、東南アジアから帰国したのだという。嘔吐と下痢を繰り返し、しきりに右足の痛みを訴えた。 全身に倦怠感があり、37.2度の微熱があった。治療にあたった中村医師は、旅行先で生ものを食べたのではないかとして、急性胃腸炎と診断。下痢と嘔吐による脱水症状を補い、胃腸炎の薬を投与するため点滴が行われた。 Aさんがしきりに痛みを訴える右足を見てみると、全く異常は見られなかった。点滴によってAさんは下痢と嘔吐が治まり少し落ち着いたため、この日は整腸剤のみを処方し、Aさんは一旦帰宅した。 だが翌日、Aさんは再び内科の救急外来を訪れた。足の痛みは堪え難いものになっていた。

 Aさんはそのまま緊急入院。右足は壊死し始めていた。体温40.1度、懸命の処置にも関わらず、壊死の進行は止まらない。さらに足の筋肉が壊死したために、それに伴って急性の腎不全も起こしていた。 壊死が進行する右足切断のため手術室へ。すると!!右足の壊死の範囲が拡大、しかも左足も壊死が始まっていた!!未だかつて直面したことがない病状に医師達は凍り付いた。 Aさんの血圧が急激に低下し心拍が停止。懸命の処置でAさんはなんとか蘇生したが、呼吸は微弱で足の切断に耐えられない状態だったため、手術中止を決定。 壊死を食い止めようと、病室で様々な抗生物質が投与されたが壊死はさらに進み、翌日の午後7時44分、死亡が確認された。最初に病院を訪れてからわずか46時間、あらゆる処置を上回る症状の進行だった。だが、この異常な事態は他の病院でも起こっていたのだ!!

 2000年6月、千葉県内で起きたケース。左手の腫れと痛みを訴え、Bさんが来院してきた。医師は虫刺されと判断し、痛み止めを処方した。 だが2日後、Bさんは激しい痛みを訴え病院に運び込まれた。左腕は壊死し始めていた。その時、医師はある感染症に思い当たった。 それは、かつてアンビリバボーでも紹介した人食いバクテリア、『A群レンサ球菌』。 A群レンサ球菌は、普段は普通の風邪を引き起こすバクテリアであるが、稀に歯止めの効かない劇症型に変化することがある。そのメカニズムは解明されていないが、発病すると手足から壊死が広がり死に至る。 2000年当時、千葉県内ではこの感染例が20件ほど報告され、症状や対処法などが知られていた。 A群レンサ球菌ならば、ペニシリン系の抗生物質がよく効くはずだった。だが、大量のペニシリンを投与しても症状は抑えられなかった。入院からわずか37時間後、Bさんは死亡した。

 2001年7月、全く別の病気で入院していたCさんの体に突如同様の異変が起こり、間もなく死亡した。その後も同様のケースが多発、発症してから死に至るまでは72時間、恐怖は日本各地へと広がっていったのである。 未知なる症例を目の当たりにした中村医師と同僚達は、原因究明に乗り出した。さっそく、亡くなったAさんから採取された血液などの分析が行われた。すると、血液中や壊死した組織の中にそれが潜伏していた。 中村医師は間もなく、その恐ろしい悪魔が30年程前に発表された論文の中にそれが存在していたことを知る。長崎大学医学部の教授らによって1978年にひっそりと発表されたその論文には、『急激に体が腐り、死に至る』という症例が写真つきで紹介されていたのである。

 恐怖の病原体の正体は『ビブリオ・バルニフィカス』、腸炎ビブリオやコレラ菌の仲間である。増殖が速いとされる大腸菌は15分から20分で倍に増えるが、ビブリオ・バルニフィカスはその半分の時間で倍に増えると言われ、感染すると24時間以内には発病するという。 皮膚の下の筋肉の膜を破り壊死させ、やがて急性の敗血症によってわずか3日で命を奪う殺人バクテリア。効果的な抗生物質を投与すれば命を救うことは可能だというが、少しでも対応が遅れると死亡率は飛躍的に上がってしまう。 では、ビブリオ・バルニフィカスはどうやって感染するのか?ビブリオ・バルニフィカスは海中に存在し、海水が20度を超えると増殖が速くなり、魚介類に付着しそれを生で食べた人の体に入り込むのである。 発症直前、東南アジア旅行から帰国したAさんは、帰国前日ホテルのレストランで生の魚介類を食べていた。またBさんは発症前日、釣りに出かけ、釣った魚をその場で刺身にして味わっていた。さらに入院中だったCさんは、発症前日に家族が差し入れた生の魚介類を食べていたのだ。 それらはビブリオ・バルニフィカスに汚染されていた可能性が高く、それが感染ルートとなって発症したのだと推測された。さらにビブリオ・バルニフィカスは手足の傷などから感染することもあるという。

 ところがこのビブリオ・バルニフィカスの国内最初の発症を扱った論文は、発表当時、注目されることはなく、他の医師達に知られることもなかった。それは同じ魚介類を食べたにも関わらず、他の人達は発症しなかったという点が大きかった。だが実は、発症者に共通するある重要な要因があったのだ!! Cさんは肝硬変で入院していた。また、AさんもBさんも肝臓を患っていたのだ。肝疾患になると体内の鉄が過剰状態になる、ビブリオ・バルニフィカスは鉄過剰状態で増殖しやすくなるのだ!!そのため、体に鉄が溜りやすいとされる男性に感染例が多かった。

 そしてさらに驚愕の事実が明らかになった。 2003年の新聞報道によれば、国立感染症研究所と東京、熊本、宮城などの6都県の地方衛生研究所は2001年6月から10ヶ月間、入手が簡単なアジとアサリなどの数品目を毎月スーパーで購入、ビブリオ・バルニフィカスの有無を調査した。すると!!集められた372の検体のうち58検体、16%からビブリオ・バルニフィカスが見つかったのだ!! その予防策は、よく火を通してから食べること。さらに、包丁やまな板などの料理器具も十分流水で洗い流す必要がある。肝臓に疾患がある人や、感染に注意をする必要がある人はもちろんだが、健康な人も稀に軽い下痢や腹痛を起こすこともあるというので注意が必要だ。 もうすぐ夏、地球温暖化の影響を考えればビブリオ・バルニフィカスの驚異は例年以上に高まっているのかもしれない。


以上、『たけしのアンビリーバボー』の「人類を襲う未知の病原菌」(2009年5月21日放送分)HP掲載文より。

2009-06-02

2009/06/02 (火) 追記

 『2009/05/25 (月) ハイリスク群の新型インフルエンザ対策について』で、書き忘れた事があったので、追記した。