2008/07/14(月) 教員採用試験不正の波紋
7月に入ってから、巷のニュースでは、大分県教委汚職事件が大きく取り沙汰されている。この事件、大分だけでは治まらず、全国の教育委員会に飛び火するのは必至だろう。何故なら、こういった類の問題は、既に20年以上前からあったと思われるからである。だから、この問題、単に1県だけでの事件として大騒ぎする所では済まなくなる程の、重大な問題へと発展する様な気がしてならない。
自分は教育学部ではないが、教員免許を取得している。卒業後は、小学校ではないが、高校等の非常勤講師等をしながら、何回か市の教員採用試験を受けた事がある。受験前には、講師仲間や先輩教員から、過去問とか、試験勉強のポイント、或いは「常勤講師の方が、絶対に有利であるから(即ち、より、教師になる意欲があるとみて貰える可能性があるから)、常勤になった方が良い」とか色々アドヴァイスも受けた。
常勤講師の時は、同じく常勤で、教員採用試験を何回も受けていた同僚の話は印象的だった。「教員試験なんて、無いも同然、コネの力が多大」と断言した彼女は隣県から通勤していたが、「今はK市で常勤をしているからK市の教員採用試験を受けるのが断然有利なので、(地元ではなく)K市の試験を受けている」のだという。
“親が教員の人は有利らしい”だとか、“教育委員会に知り合いがいると(特に、直接顔見知りになって、気に入って貰えると)合格し易いらしい”とかいう話が、まことしやかに囁かれているのもよく聞いた。更に、そんなこんなの話を親に話すと、それはあってはならない事ではあるが、昔から似た様な話は(教員に限らず)良く聞く話だ、といって、色んな話をしてくれた様に思う。つまり、そういった傾向ははるか昔から存在しているのだと言えるかもしれない。
最初に非常勤した所の先輩先生は、同期で教育委員会へ異動している先生を、「教員になるつもりなら、顔見知りになっておいて不利はないから」と気を遣って、教科での飲み会(学期末の打ち上げ)の時に連れてきて、引き合わせて貰った事もある。その後その教育委員会の先生とは、年度末になると、次の非常勤・常勤捜しの問い合わせで電話があったり、時には、有能な教員候補を私が紹介した事もある。
この教育委員会の先生とは、紹介して下さった先生を交えて、もう一度位(試験面接時以外で)会った覚えがあるが、何で呼び出されたのだろうと思っていくと、雑談に始まり、今年も採用試験を受けるのかというまじめな話になり、その続きの様な感じで、不意に、「知り合いに適齢期の良い男性教師がいるのだが、どうでしょうか?」と、暗に見合いを勧められた事があった。いきなりで正直戸惑ってしまい、出来るだけ丁寧に当たり障りなくお断りしたつもりであるが、採用試験を控えている者に対して、教育委員会に属する先生が、一体どういうつもりで、この話を持ち出されたのか、未だ理解に苦しむ。
話は逸れるが、自分自身が講師になる迄は全然認識していなかったのだが、学校の先生の中には、自分を含め、まだ正教員でない、いわば派遣の様な形の先生が、ごく普通に、どの学校にも(自分の想像以上に)いるという事に驚いたものである。退職後の教師など例外はあるだろうが、その多くは大学で免許を取得後、採用試験受験を目指しながら現場で教えている、自分と同じ非常勤や常勤講師で、教師の卵達である。しかし講師の勤め口は、来年はあるかどうか保証されていないのが実状で、常勤講師等は、正教員と全く同じ仕事量なのに、採用試験勉強もしなければならず、給料等、割に合わない、とぼやく人も多かった。また、受験に年齢制限もあり、とうとう諦めてどこかへ職を探す人も多いという。
採用試験でも、“今年は体力検査も取り入れる事にした”と変えられた事がある。今はあるかどうか知らないが、確か、他所の採用試験で実施し始めたから、市の教育委員会でもやる事になったと聞いた。より万能な教員を得る為か、ふるいにかける為か知らないが、やる事が安易である。その為、体育の先生希望者でなくても、受験科目になってしまえば仕方がないので、全員体力試験も受けなければならなくなってしまった。
教科はともかくも運動全般はそこそこ出来る自信はあったので、私にとってはここで出来るだけ点数を稼ごうと(恥かしながら)思って受験に臨んだが、受験は夏休み初めの、非常に暑い時期にある。毎年、筆記試験だけでも暑くて疲れてしまうのに、運動能力試験も蒸し暑い体育館の中で行われ、自分は、それでも各種こなしていったが、もう暑くてくたくたである。受験者の中には太っていて、運動は何年もしていなさそうな受験者が、汗だくになって必死に坂上がりをしようと頑張っていたが、とうとう一回も出来ないうちに時間切れになってしまって肩を落としているのを見ると、ますます教育委員会のする事に、不審を抱いてきたのを思い出す。
ちょっと話が脱線してしまった。私の場合、学校の授業の下調べや準備、テストや成績付け等と、採用試験勉強を両立する事が下手で(要するに出来が悪かった為)、結局合格はしなかったが、何年か現場で教員をしていると、何故この先生が採用試験に受からないのか、とか、どう考えてもすべった筈の人が採用されたらしいよ、という話を実際に見たり聞いたりする事は少なからずあった。
たとえ金品の受け渡しが無かったにしても、万事、こんな調子なのだから、今回の事件の様な体質が、大分以外の他府県には無い(残っていない)と、どうして考えられるだろうか? だから、これを突けば突く程、相当数の不正が上がってくるのは避けられないと思う。逆に、全ての教育委員会でそうだとは思っていないが、もし、これ以上大して出てこなければ、教育委員会内で事実をもみ消してしまっていると考えてもいいかもしれない、とまで思ってしまう。
この不正採用を知らずに教員になってしまっている人もいるだろう。実力だけで十分合格していた人もいるだろう。不正を知った上で教員になっている人もいるかもしれない。そして不正の有無にかかわらず、優秀な教員もいれば、問題行動を起こす教員もいるだろう。その一方で、正教員を目指しながら、現場で教えている講師も多くいる。教員になっている人全員がそうでない事は明らかだが、一部の不正の為に、教師に対する不信が世の中に広がってしまうのは、防がなければならないと思う。
常勤・非常勤講師であろうと、正教員であろうと、教壇に立てば、先生としての責任のもと、まじめに生徒と向き合っていると思う。少なくとも自分は教える事に精一杯努力した。今回の件で、不正採用がはっきりした教員の採用を取り消されたとニュースで流れたが、既にほぼ1学期教えてきた先生である(どんな人かは知らないが)。そうせざるを得なかったのだろうが、学校の事を一番よく考えなければならない役職についている教育委員会の一部の人がしでかした事が元になっている。不合格者にとっても、既に再受験を目指しているか、諦めてどこかの会社に就職しているかもしれない。子供達にとってのみならず、現役教員を含め、教師を目指す人達にとっても、多大なる被害を与えた結果となったのではないだろうか? 複雑な気分だ。
これはあくまでも個人的な見解なので、全ての教育委員会がそうだと言っているのではないが、ようやくこういった不正が暴露されたのだから、こんな体質は一日も早く改善される事を望む。不正関係者の処分とかいうが、例えば、採用試験を行なう為には特別な人件費もかかるし、全受験者も受験料を支払っているので、細かい事を言えば、県民や受験生が損害賠償を請求してもおかしくないのではないかと思うのだが、先ずは採用試験が正常に行なわれる様になっていってほしいと思う。そうした上で、“関係者の処分でこの件は終わり”等と安直な解決法を取るのではなく、根本的に不正を正していく事を望んでいる。
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