2008-11-30

2008/11/17 (月) 通院記録3 肝臓のGVHDに瀉血?

 私の場合おおむねGVHD(移植片対宿主病;graft-versus-host disease)の症状は免疫抑制剤(immunosuppressant)を服用している限り、軽い方で経過している様だ。その一方で、GVHDが全くと言って起こらないよりは、軽いGVHDが起こっている位の方がGVL効果(graft-versus-leukemia effect)というものが起こって、完全に治る(根治)確率が高くなるという臨床結果があるそうだ(※GVHDは本人以外の血球(造血細胞)が移植された事によって、移植された側の患者自身の体が異物と認識され攻撃される為に、患者の体に起こる症状の総称なのだが、免疫抑制剤を飲む事によってその攻撃力を弱めている。GVHD症状の軽い患者ならば、早めに免疫抑制剤を減らして(要するに軽めのGVHDが起こる程度に調整して)、移植した血球に、残存しているかもしれない白血病細胞(腫瘍細胞)もやっつけて貰って根絶してしまおうという考えがGVL効果)。先生はその効果を期待して、早く免疫抑制剤を減薬、そしてゼロにしたいと考えておられるのだが、減薬も最終段階に至って、私の肝機能(liver function)が敏感に反応してしまう(肝臓にGVHDがきつく起こってしまう)ので、現在、1日50mgからなかなか減らせないでいる。焦って減薬しても、白血病細胞(leukemia cell)よりも先に私の肝臓がやられてしまっては元も子もないから、仕方がないが、前回先生から頂いた「幸い、再発(recidivation)ではないので、いいですね」といった内容の言葉に、妙な感慨を覚えている。

 さて、今回の肝機能検査結果(GOT、GPTはまだ中程度に高いながら、全般に下げに入っている)を一緒に確認した後、不意に先生が次の様な話を始められた。

 今月、先生は色々な学会に参加されていたのだが、その中の報告の一つに、慢性GVHDで肝機能が悪化する原因に鉄が関与しているというのがあったそうだ。それならば瀉血(bloodletting)は本当に有効な方法の様に思われると先生(よく分からないが、確かこんな感じの内容だったと思う)。

 鉄関連の血液検査には、鉄(Fe)やフェリチン(ferritin)、UIBC(不飽和鉄結合能:Unsaturated Iron Binding Capacity)といった項目がある。私の肝機能検査値上昇時には時々先生がこの検査項目を追加している。肝機能値が異常に高くなった時等は、フェリチンの値も異常高値を示しており、鉄が肝臓に負担をかけているらしい事を、昨年末からの肝機能値異常高値の時に先生が説明されておられた。そしてなかなか改善しない私の肝機能値、下がらないフェリチンの値を見て、「恐らく瀉血をすれば、この値も一気に改善するのではないか」という話をされていた。要するに鉄が肝機能値異常高値の原因の一つなら、血を抜くだけで効果がある筈だというのだ。もう少し詳しく説明すると、血液の赤い色には鉄分が多量に含まれているので、体内で鉄過剰(フェリチンが高値)ならば、血を抜くのが手っ取り早く鉄分(フェリチン)の値を下げる方法だという。そして、肝臓に負担をかけている可能性のある鉄分が減るので、肝機能もより早く回復に向かうだろうという考え方だ。どれ位抜くのかというと、献血(blood donation)並みの量で十分という。

 瀉血といっても、献血同様、単に血を抜くだけなのだという話を聞いて、それならば是非抜いて下さいというと、瀉血という治療行為は、特定の病気にしかしてはいけないという決まりがあるらしく、確か、私に瀉血をすると保険適応外になるとか何とか言われたと思う。「保険適応外で高くついてもいいので、本当にこの肝機能値が改善するかどうか確かめてみたいのでして貰えませんか? それに今ならば、瀉血による変化が出るかどうか、顕著に分かる位の高い値ですよ」といってみたのだが、どううしてもダメで、治験(clinical trial)という形を取らねば出来ないとか何とか……、それでは治験でいいので、と患者である私の方が、更に食い下がって粘ってみたが、実現する事は無く、時間をかけて肝機能値改善を待つ事となったのだった。(参照:『2008/01/11(金) フェリチンの結果』)

 ところが、今回、難攻不落だったKB先生の方から「次回フェリチン(鉄)の血液検査もしてみて、高かったら瀉血をしてみますか」と言われるのである! 学会で刺激を受けられたのだろうか? 珍しく積極的である。こんな機会はめったにないので、試して確かめてみたい、という気持ちが、またもふつふつと沸き上がる。しかし私の記憶では、一番最近調べたフェリチンの値は、年始の結果と比べると、かなり下がってきていた筈だったので、一体どれ位の値でフェリチンが高いと見なすのかを訊いてみると「1,000以上……、場合によっては500以上でも高いとみる」、と言われる(この返答のされ方あたりにも、瀉血についての意欲を少し感じる)。しかし、今日の肝機能検査結果から、現在既に回復に向かっている(しかも今回は原因が分かっているので、前回程悪化する前に手を打っている)ので、果たして、次回500以上あるかどうか分からない。500以下の方が検査結果としては(当然患者の健康上は)いいのだが、せっかく先生が試してみられる気になられているのに、試す事が出来ないとしたら、それも少し残念である。

  「前回の高かった時に、試しておけば良かったのに」、というと、普段、血液の病気の患者に対しては輸血というのはあっても、血を抜くという、いわば通常の治療とは逆の行為である「瀉血」という発想は、患者さんの気持ちを考えると、なかなか難しいものがあって、ためらってしまう(それ以外の治療法を検討する)のだそうだ。今年初めの時、あれだけ先生に、抜いてみて下さい、といった私って、ちょっと変な患者?!

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