2008-08-31

補足:IVHカテーテルとCVカテーテルの違い

 先日、『IVHカテーテル(CVカテーテル)挿入法について』(「生亜紫路」版)、『IVHカテーテル(CVカテーテル)挿入法について』(「生亜紫路2006」版)について書いたが、その補足事項を以下にまとめておく。

 中心静脈に挿入するカテーテルについて調べると、IVHとCVという2つの言葉がよく出てくると思う。この2つは違うものなのだろうか、それとも同じ事なのだろうか? 入院当初は私もよく分からなかった。

 IVHとは医学用語のintravenous hyperalimentationの略で、訳すと、「中心静脈高カロリー輸液(法)」となる。一方で、CVとはcentral venousの略で、「中心静脈」と訳す事が出来る。ちなみに central venous nutritionとするとこちらも、「中心静脈高カロリー輸液(法)」という意味になる。

 このintravenous hyperalimentation(IVH)、或いはcentral venous nutrition(CV高カロリー輸液法)の意味は、口から栄養がしっかりと採れなくなった患者さんに、心臓近くの大静脈(主として上大静脈)内にカテーテル(管:catheter)を挿入して、直接栄養になる液を血中に点滴で体内に入れる方法の事で、非経口栄養の一つである(非経口栄養には、この他に鼻孔等から管を直接胃・小腸等へ挿入する方法もある)。その為、中心静脈へ挿入するカテーテルの事を、IVHカテーテルとかCVカテーテルと呼んでいる。ちなみに、hyperalimentationには「(点滴等による)過栄養」という意味、nutritionには「栄養物摂取、食物、(栄養作用)」等の意味がある。

 IVHには、上記の様な意味がある為、私の様に、抗癌剤(anti-tumor agent)を点滴する為に挿入されたカテーテルの事を指すのならば、IVHとか、IVHカテーテルと表現するのではなく、CVカテーテルと表現するべきで、その方がより正確だと書いたページを読んだ記憶もある。それを考慮するのなら、「H」を抜いて「IV」とすれば同じ様な気がする所だが、「IV」だけならば「intravenous」の略になってしまうから、単に「静脈(内)の」とか「静脈注射の」という意味になり、静脈ならどこでもいい感じになり、ここで言う「CV」(central venous:中心静脈)の意味合いが無くなってしまう。

 では、この中心静脈に直接栄養液や抗癌剤を点滴するというのには、どういう意味があるのかというと、色々辞書を読んでみて考えるに、次の様になる。まず、中心静脈とは心臓から一番近くて太い静脈で、上大静脈(superior vena cava)や下大静脈(inferior vena cava)を指している様だ。上大静脈は上半身をめぐる静脈の最終合流地点で、CVカテーテル挿入候補の内頚静脈(内頸静脈:internal jugular vein)も鎖骨下静脈(subclavian vein)も、腕の色んな場所にある静脈も、合流しながら、最後にはこの一本の太い上大静脈に合流して、心臓(右心房)に流れ込む。下大静脈は下半身からの静脈の最終合流地点と考えれば良いかと思うが、脚の色んな静脈や大腿静脈(femoral vein;venae femoralis)も、最後にはこの一本の太い下大静脈に合流して、これも心臓(右心房)に流れ込む様になっている。つまり、これら中心静脈の部分では、体中からの、大量の静脈血が流れ込んでいる事になる。

 臨時的に、腕とかの末梢静脈に針を刺した状態(カテーテル挿入ではない)で、点滴を行なう事もあるが、特に抗癌剤等は成分がきついので、点滴部位の血管壁にも負担がかかるそうである(末梢静脈だから、当然血管自体も細い)。そこで長期的に行なう場合は、心臓近くの中心静脈までカテーテルを挿入して、そこに直接点滴液が到達する様にする。そうすると、そこでは血量が多い為、静脈血によって点滴液が即、大量希釈されるので、血管に負担をかける事なく、持続的に点滴が可能となる様だ。それに心臓なのだから全身にも効率よく、栄養剤や薬剤が巡りそうな気もする。

 ここまで書いてきて思ったのだが、いくら大量希釈されるとはいえ、この静脈血は右心房(right atrium)→右心室(right ventricle)を経て、最初に肺(lung)に行く。そこで酸素を貰って鮮血の動脈血になり、左心房(left atrium)→左心室(left ventricle)から上行大動脈(ascending aorta)へ送られ、全身に流れる事になるので、抗癌剤なら、なんだか、肺に負担がかかりそうな気もするのだが、どうなのだろうか?

 さて、病院内で、先生やナース、患者間で、どの表現をしていたかを思い出すと、やはり人それぞれの、ごちゃ混ぜで、IVHと言う人もいれば、CVと言う人もおり、それらが同じ事を指しているという事に慣れる迄は、やはり「何かまた新しい言葉が出てきた」とか「違うものに変えるのだろうか」とか考えてしまい、理解する迄に(ある意味、安心する迄に)かなり混乱した覚えがある。

 結論を言うと、厳密に使い分けている所(病院や医師)もあるかもしれないが、IVHとCV、或いはIVHカテーテルとCVカテーテル等といった言い方は、同じ意味で使われている事が多いと考えていいのではないかと思う。

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