2008-08-29

2008/08/27 (水) 卵巣組織保存について

 未婚女性の癌患者にも卵子(egg;ovum)保存の道が開かれた事については、以前「生亜紫路2006」の『2006-03-27(月) 卵子保存について』という所で少し書いた。これに関係する内容であるが、今日、卵巣組織凍結保存・移植(transplantation)によって、妊娠が可能といった内容のNHKニュースが流れた気がした。丁度TVの電源を入れた時に、ちょっとだけ耳に聞こえたので、詳しい内容はよく分からなかったが、気になったので、インターネットで調べてみた。

 このニュースのおおもとは、卵巣組織凍結保存・移植によって、抗癌剤(anti-tumor agent)の治療後に閉経(menopause)してしまった女性の出産(birth)に、ベルギーの研究者らが成功したという2004年の研究だと思われる。ベルギーの研究者らの報告は、だいたい以下の様な内容である。

 きつい抗癌剤による化学療法(chemotherapy)や放射線(radiation)治療等を受けた女性の癌患者は、早期閉経と不妊(sterility)にみまわれる可能性が非常に高い。これの治療法として、癌患者が治療(化学療法)にはいる前に、卵巣(ovary)の組織片を採取凍結保存したという。癌治療後にその女性患者はやはり閉経してしまったが、その同じ患者の卵巣に、凍結保存していた卵巣組織を採取6年後に移植した結果、女性は間もなく月経(menstruation;menses)・排卵(ovulation)が再開し、11ヶ月後に妊娠(pregnancy)も確認され、無事出産したという。

 今日のNHKニュースでは、日本とアメリカとの共同研究らしい。臨床結果は、そこまでの成果ではなさそうである(患者から採取した組織片を他の人に移植している点)が、卵巣組織保存の技術は出来てきた様に読み取れる。

 急性の血液疾患等では、即時治療開始を迫られ、卵子保存にしても、最初の治療後、なるべく早い時期に、という。いくら早期に卵子採取が可能になったとしても、色々な壁があると思う。卵巣組織採取なら、卵子採取より更に確実に採取・保存が可能の様な気がする(よく知らないが)。入院時に、血が止まり難い等の症状がある人は、すぐの採取は難しいかもしれないが、卵子保存で悩んでいる女性患者にとっては、希望が増えたニュースではないだろうか? まだまだ研究途上という気がするが、もし卵子保存をするのなら、その時に卵巣組織も、卵子が無理でも卵巣組織だけでも凍結保存しておきたいと、自分なら考える。現在の日本なら、取り敢えずでも高い技術で冷凍保存さえしておけば、治療が終了する頃には更に卵巣移植技術や成績もアップしているのではないだろうかと思うからだ。採取する組織片はベルギーの論文では12-15mm×5mmの組織片5個だそうだ。今ならもっと小さくても可能かもしれないし、開腹しなくても(小さな切開で)取り出す方法があるのではないかと思う。治療によって閉経・不妊になってしまう可能性が高い以上は、(現時点では)残しておかない限り、あとで悔やんでも卵巣の移植治療のしようがない。

 原論文のタイトルは「Livebirth after orthotopic transplantation of cryopreserved ovarian tissue」(Lancet誌、2004年の論文)だそうなので、読める環境におられる方は、こちらもご参照下さい。

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