2007-03-27

Toll様受容体と自然免疫系

3/24(土)、NHK教育TVで「Toll様受容体と自然免疫系」という番組を見た。内容は自分なりに解釈すると、次の様になる。即ち、ヒトの自然免疫(natural immunity)細胞にToll様受容体(Toll-like receptor)と言うものがあり、免疫に関係している。このひとつひとつのTollが細菌成分を認識するセンサーになっていて、どんな異物が入ってきたか獲得免疫(acquired immunity)細胞に指令を送る。つまり、今迄、より原始的システムと考えられていた「自然免疫(樹状細胞等)」が「獲得免疫」を支配している事が分かり、この発見により、新しいガンの免疫治療の研究への応用もされる様になったというのだ。
※ 自然免疫:先天免疫とも言う。生体が生まれつき持っている。自然免疫の受容体は病原体を幅広く感知する。
※ 獲得免疫:後天免疫ともいい、生後に獲得したもの。獲得免疫の受容体は一つの病原体に反応する。

何に注目したかと言うと、この方法だと細胞レベルでガンを攻撃出来る点である。もしこれが白血病治療に応用出来たら、完全治癒も夢で無くなるのではないだろうかと思った。つまり、細胞レベルで白血病細胞(leukemia cell)を一つ残らず根絶出来る治療が生まれるのではないかと思ったのである。

自分が罹った白血病(leukemia)とは血液のガンで、例えば現在の医療なら同じガンでも臓器に出来るガンや腫瘍は早期なら切除する事によって完全に治癒する事が可能なのであるのに対し、急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia;ALL)の場合は癌化した白血球細胞(白血病細胞)が異常増殖し、白血病細胞も含んだ血液は体中を駆けめぐっている状態で、いくら化学療法等で白血病細胞を叩いて退治しましたといっても、100%白血病細胞を殺す事は無理であると私はイメージしている。現在の治療は厳密に言うと白血病細胞の数を限りなく0に近づける治療であると言えるのではないだろうか。こういう所から、白血病では【治癒】と言う言葉は使われず、【寛解(remission)】と言う言葉を使っているのだろうと思う。
※ こう書いたからといって、この病気が絶対治らない、必ず再発する病気であるといっているのではないので、このブログをお読みの方はどうか誤解しないで欲しい。治療が成功した人は白血病細胞が限りなくゼロに近く(検査では検出されない状態)、かすかに残っている白血病細胞も活動を休止しておとなしくしている、増えない状態になる。なおかつ、この状態を維持して5年再発しなかった人はその後の再発率は非常に少なくなる事から、治癒したと表現する事もあるそうである。年々その5年生存率も増えてきている。
 また、骨髄性白血病(acute myelocytic leukemia;AML)は完全治癒が可能な病気であるそうだ。これは骨髄性白血病に効く薬があるからだそうだ。それに対しリンパ性に効くの薬の方は本当に効かそうとすると薬が強過ぎて患者の体(命)がもたないので、どうしても完全に白血病細胞を叩く事がなかなか出来ない、と言った感じの説明を以前担当して下さった先生にして貰った事がある。同じ血液の病気なのに何故?と未だに不思議な感じを受けてしまう(未だによく理解できない)……但し、これはあくまでも私が受けた化学療法、治療での話しであるという事にご注意願いたい。同じ病気に罹った人には、今後ますます白血病治療は発展するだろう事から、どうか、ここでの記事はあくまでも参考程度にして、果敢に病気と闘っていって欲しいと願っています。

急性白血病と宣告された時、難儀な病気になってしまったものだと思ったが、この研究はなんだか白血病治療にも応用出来るのではないだろうかと感じさせるものがあった。

このガンの免疫治療とはどんな方法かというと、これまた自分の解釈でまとめると次の様になる。獲得免疫を担う細胞である「キラーT細胞(killer T cell)」は対外異物を攻撃する働きがある。この「キラーT細胞」を活性化するとガンを攻撃してくれる。これをガンの免疫治療に応用すると、先ず、ガン抗原を体内に入れる→自然免疫が活性化されて指令を獲得免疫に出す→キラーT細胞が増殖して目的のガン細胞を攻撃する。この図式が簡単にいかない点は、このキラーT細胞がガンを撲滅させるだけの十分量まで増えてくれない所にあるらしい。TVではTollを刺激する物質(CpG)を使ってTollをより刺激する事によってキラーT細胞をより多く増やせるのではないかとマウスで実験中だという話だった。

ところで、自然免疫も獲得免疫(キラーT細胞)も白血球の仲間である。自分は白血球がガン化した白血病である。果たして自分が思った白血病の免疫治療というのは理論的に可能なのだろうか? このあたりで頭が混乱してきてしまった為、昨日2週間ぶりの診察を受けに行った時、よく分からない点を先生に質問してみた。結果から言うと可能だそうだ(この大学でもその研究をしている先生もおられるそうである)。ちなみに私の病気の場合はB細胞の異常との事。
 この治療を行なうとした場合(まだ確立してはいないのでここからは仮定の話)、いくらガン化したとはいえ白血病細胞も一応自分の細胞なので自己と認識してしまい、そのままではキラーT細胞は攻撃してはくれない。そこでそのガン細胞を用意して先ず自然免疫(樹状細胞)にこれがガン細胞(異物)ですよ、と教育する必要がある。そうして教育した樹状細胞は獲得免疫(キラーT細胞)にその情報を提示し、キラーT細胞がガン細胞攻撃を開始してくれる、というものだ。ただこの時問題なのは、白血病初発の時はその人の白血病細胞が大量に手に入るが、一度完全寛解に達した後で不幸にも再発した場合、その人は再発していないか気をつけて常に血液検査をしているだろう事から、再発したとしてもごくごく初期に発見される事になる。つまり、発見される白血病細胞の数は初発の時とは比べ物にならない位ごく少数と言う事になる。すると、自然免疫を教育するのに足りるだけのガン細胞が得られないという事になり、なかなか難しいでしょう、との事だった。
 私の場合は発病入院時、白血病細胞は91%もあった。一方で、今後は1%未満でも白血病細胞を検出したら(検査の精度がとても進んでいるので100万個の血液細胞中に1個でも見つかれば)、再発となる。再発したとしても白血病細胞の数は少ないに越したことはない。しかし手に入れられる(自然免疫細胞教育用の)ガン細胞の数が少ないという事になる。う~ん... なんとも複雑な事になってしまう。(少ないなら培養して増やせば良いじゃないかとも思ってしまうのだが、そういうものではないのかもしれない。) まあ、まだ研究は始まったばかりだろうから、今後の研究に期待したいところだ。
※ 学術的に間違いがありましたら、教えて頂けると助かります。
※ ちなみにGVL効果(graft-versus-leukemia effect;移植片対白血病効果)というのがあるがこれは、骨髄移植で自己の血液をドナーの血液に置き換える事によって、移植されたドナーのリンパ球で自分の中に残存する白血病細胞を異物と認識させて叩かせるという方法で、これも免疫治療といえるそうだ。

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