2007-03-30

2007-03-30(金) 今週月曜日の通院記録

 今週月曜日(3/26)は2週間ぶりの通院日で、入院丸一年でもあった。今朝は暖かいが、手足指関節痛(曲げると特に第一関節が痛む、激痛が走る時もある)、首痛、ひざ痛、足のかかとも歩こうとするとこわばっていてしばらくの間は歩きにくい現象等はいつもの通り。今朝はのども少し痛い。それからこのところ口臭がする様になってきた気がする。気のせいなら良いのだが。確かに移植後は乾燥肌になっている。血圧(blood pressure;BP)は高めだ。

 大学病院に着いて、3~40人待ちの採血受付までの行列、受付後採血まで40人待ち、病院到着後約40分で採血の順番が来た。今日はいつもより少し早い。退院後初めて検尿(urine analysis;uroscopy;urinalysis)もあった。昼頃、診察の順番が来た。主治医にこの2週間の主な症状を話し、質問する。
・ 右胸のIVHカテーテル(intravenous hyperalimentation catheter、中心静脈カテーテル)を抜いた痕の皮膚がまだ薄く時々小さなかさぶたが出来ている件については、移植の為、皮膚の修復能力が落ちているからかもしれない(気にする程度でない)。
・ 口臭がする気がする件については、口の中にGVHDは出来ていない様なのでうがいをもっとしたらどうか(これも気にする程度でない)。
・ ムカムカする(むかつく)件については、GVHDと思われるので吐き気止めを今迄通り飲めばよいが、減らす様に心がけて欲しい。
・ 体中痛くしんどい件についても、その時に飲む痛み止めのロキソニンは胃のためも日に2錠を限度に、減らせるなら飲まない様にしていって欲しい。
・ 血圧は上が140以上、下が90以上と高めの日が多い件については、免疫抑制剤のネオーラルの影響、少し高めだが様子を見ましょう、との事。ネオーラルは減らしてきているのに血圧は下がらないと言うと、ネオーラルを完全に止めてもすぐには下がらないとの事。ネオーラルの量を決めているCyA(シクロスポリン)血中濃度78だった。これは今の私の場合150位が効いている値だそうだが、低めに設定しているのでこの値でも大丈夫らしい。
 私の目下一番きつく出ている諸関節痛というリウマチ様症状は徐々にきつくなっているのだが、これが移植によるGVHD(移植片対宿主病;graft-versus-host disease)なのかどうかはもう少し長い期間をかけて観察しないと判らないと今回も言われた。また、これが更にきつくなるのか症状がやわらぐのかは個人差(individual variation)があって経過をみないと判らないとしか答え様がないみたいだ。また、リウマチかどうかの検査は別にあり、しっかり診てもらうのなら『膠原病科』へ行く必要があると言う。
 もしリウマチ様関節炎(rheumatoid arthritis;atrophicarthritis;chronic infectious arthritis;proliferative arthritis)ならば、これも自己免疫疾患(autoimmune diseases)の一つなのでその治療薬は免疫抑制剤(immunosuppressant;ネオーラル、シクロスポリンといった薬)が使われる事になると以前の診察時に言われた事がある。私は骨髄移植(bone marrow transplantation;BMT)をした為、現在ネオーラルという免疫抑制剤を主に服用しているが、この薬を最終的にゼロにするのが移植後治療の一番の目標で、現在徐々に減らしてきている最中である。減らせばこの関節痛がきつくなるのではないかと先生に質問すると、それもどうなるかは実際にみてみないとわからない、と。なかなかうまい事いかないものだ。これ以上ひどくならない様に祈るしかない。

 尿検査に異常は見られなかった。血液検査では肝機能の値は2月に入ってからずっと標準値内だったのだが今回高めのGOTが54、GPTが67になっていた。感染や風邪も引かず食生活もいつもと変わりなかった為、何故高くなったか原因はわからない。先生は「肝臓のGVHDの可能性があり怖いので、免疫抑制剤は今回も減らさず、同じ量を維持しましょう、急に息苦しくなるとかの肺機能に注意して、何か異常を感じればすぐに病院に来て下さい」、と言われた。GVHDの症状は人それぞれでいろんな所に様々な症状として現れると聞いてはいたが、肝臓にも出る事があるのかと驚いた。これもそうでない事を祈るのみ。

 診察後、薬・会計等を済ませ、久々にかつて入院していた病棟へ行く。来月から入院中に担当して下さっていた先生が大学院へ移られる筈なので、ご挨拶をと思い立ち寄ってみた。担当してくれていた看護師さん達が私と気付き、元気そうなのを喜んでくれ、気をきかせて先生を呼び出してくれた。久々にお会いした先生には近況報告をしたが、先生もカンファレンス(conference)で大体の経過は知っておられた。私のリウマチ様関節炎の症状は移植患者にはあまり見られない症状だという。皮膚が象皮状に硬くなる患者さんはたまに見られるらしいが私は皮膚は柔らかいのでそれとは違うようだ。先生の、体調以外にも不安や悩みがあれば、相談にくれば良いとの言葉が嬉しかった。大学院進学後の先生は分子生物学方面の研究がしてみたいそうである。将来、仕事復帰した私と先生の研究とでコラボレーション(collaboration)する機会があればいいですねと言って別れる。

 この日は帰りに所用で郵便局等に寄ったが、26日だったせいか郵便局も混んでいて非常に時間をとられ、やっと帰宅出来たのが16:40だった。健常時ならどうって事ない時間なのに、余りの疲れの為、急に情けなく悲しくなり、大泣きしてしまった。まだまだ体力が無い事を痛感した一日であった。

【血液検査結果】
WBC(白血球数)3.8、HGB(ヘモグロビン)10.8、PLT(血小板数)143、CRP(炎症反応)0.1、GOT(AST)54、GPT(ALT)67、γ-GTP 71

2007-03-27

2007-03-27(火) 今日で緊急入院後、丸一年

 丁度一年前の今日、検査入院する(白血病の種類を詳しく調べて貰う)つもりで家を出て、そのまま緊急入院させられてしまった。取り敢えず、検査で一週間ほど入院して、病名がはっきりしたら改めて(今度はしっかりと)入院する事になるだろうとそこまでは覚悟していたのだが、まさかそのまま治療開始になるとは思ってもみなかった。その日の朝、母はまるで永久(とわ)の別れになるとでも言わんばかりの思い詰めた目をして「頑張って」と言って、いつも繰って祈っていた木のロザリオを私の手に握らせ持って行けと渡してくれたので、思わず私も涙ぐんでしまったのを覚えている。その母も今はもういない。感慨深い日である。

Toll様受容体と自然免疫系

3/24(土)、NHK教育TVで「Toll様受容体と自然免疫系」という番組を見た。内容は自分なりに解釈すると、次の様になる。即ち、ヒトの自然免疫(natural immunity)細胞にToll様受容体(Toll-like receptor)と言うものがあり、免疫に関係している。このひとつひとつのTollが細菌成分を認識するセンサーになっていて、どんな異物が入ってきたか獲得免疫(acquired immunity)細胞に指令を送る。つまり、今迄、より原始的システムと考えられていた「自然免疫(樹状細胞等)」が「獲得免疫」を支配している事が分かり、この発見により、新しいガンの免疫治療の研究への応用もされる様になったというのだ。
※ 自然免疫:先天免疫とも言う。生体が生まれつき持っている。自然免疫の受容体は病原体を幅広く感知する。
※ 獲得免疫:後天免疫ともいい、生後に獲得したもの。獲得免疫の受容体は一つの病原体に反応する。

何に注目したかと言うと、この方法だと細胞レベルでガンを攻撃出来る点である。もしこれが白血病治療に応用出来たら、完全治癒も夢で無くなるのではないだろうかと思った。つまり、細胞レベルで白血病細胞(leukemia cell)を一つ残らず根絶出来る治療が生まれるのではないかと思ったのである。

自分が罹った白血病(leukemia)とは血液のガンで、例えば現在の医療なら同じガンでも臓器に出来るガンや腫瘍は早期なら切除する事によって完全に治癒する事が可能なのであるのに対し、急性リンパ性白血病(acute lymphocytic leukemia;ALL)の場合は癌化した白血球細胞(白血病細胞)が異常増殖し、白血病細胞も含んだ血液は体中を駆けめぐっている状態で、いくら化学療法等で白血病細胞を叩いて退治しましたといっても、100%白血病細胞を殺す事は無理であると私はイメージしている。現在の治療は厳密に言うと白血病細胞の数を限りなく0に近づける治療であると言えるのではないだろうか。こういう所から、白血病では【治癒】と言う言葉は使われず、【寛解(remission)】と言う言葉を使っているのだろうと思う。
※ こう書いたからといって、この病気が絶対治らない、必ず再発する病気であるといっているのではないので、このブログをお読みの方はどうか誤解しないで欲しい。治療が成功した人は白血病細胞が限りなくゼロに近く(検査では検出されない状態)、かすかに残っている白血病細胞も活動を休止しておとなしくしている、増えない状態になる。なおかつ、この状態を維持して5年再発しなかった人はその後の再発率は非常に少なくなる事から、治癒したと表現する事もあるそうである。年々その5年生存率も増えてきている。
 また、骨髄性白血病(acute myelocytic leukemia;AML)は完全治癒が可能な病気であるそうだ。これは骨髄性白血病に効く薬があるからだそうだ。それに対しリンパ性に効くの薬の方は本当に効かそうとすると薬が強過ぎて患者の体(命)がもたないので、どうしても完全に白血病細胞を叩く事がなかなか出来ない、と言った感じの説明を以前担当して下さった先生にして貰った事がある。同じ血液の病気なのに何故?と未だに不思議な感じを受けてしまう(未だによく理解できない)……但し、これはあくまでも私が受けた化学療法、治療での話しであるという事にご注意願いたい。同じ病気に罹った人には、今後ますます白血病治療は発展するだろう事から、どうか、ここでの記事はあくまでも参考程度にして、果敢に病気と闘っていって欲しいと願っています。

急性白血病と宣告された時、難儀な病気になってしまったものだと思ったが、この研究はなんだか白血病治療にも応用出来るのではないだろうかと感じさせるものがあった。

このガンの免疫治療とはどんな方法かというと、これまた自分の解釈でまとめると次の様になる。獲得免疫を担う細胞である「キラーT細胞(killer T cell)」は対外異物を攻撃する働きがある。この「キラーT細胞」を活性化するとガンを攻撃してくれる。これをガンの免疫治療に応用すると、先ず、ガン抗原を体内に入れる→自然免疫が活性化されて指令を獲得免疫に出す→キラーT細胞が増殖して目的のガン細胞を攻撃する。この図式が簡単にいかない点は、このキラーT細胞がガンを撲滅させるだけの十分量まで増えてくれない所にあるらしい。TVではTollを刺激する物質(CpG)を使ってTollをより刺激する事によってキラーT細胞をより多く増やせるのではないかとマウスで実験中だという話だった。

ところで、自然免疫も獲得免疫(キラーT細胞)も白血球の仲間である。自分は白血球がガン化した白血病である。果たして自分が思った白血病の免疫治療というのは理論的に可能なのだろうか? このあたりで頭が混乱してきてしまった為、昨日2週間ぶりの診察を受けに行った時、よく分からない点を先生に質問してみた。結果から言うと可能だそうだ(この大学でもその研究をしている先生もおられるそうである)。ちなみに私の病気の場合はB細胞の異常との事。
 この治療を行なうとした場合(まだ確立してはいないのでここからは仮定の話)、いくらガン化したとはいえ白血病細胞も一応自分の細胞なので自己と認識してしまい、そのままではキラーT細胞は攻撃してはくれない。そこでそのガン細胞を用意して先ず自然免疫(樹状細胞)にこれがガン細胞(異物)ですよ、と教育する必要がある。そうして教育した樹状細胞は獲得免疫(キラーT細胞)にその情報を提示し、キラーT細胞がガン細胞攻撃を開始してくれる、というものだ。ただこの時問題なのは、白血病初発の時はその人の白血病細胞が大量に手に入るが、一度完全寛解に達した後で不幸にも再発した場合、その人は再発していないか気をつけて常に血液検査をしているだろう事から、再発したとしてもごくごく初期に発見される事になる。つまり、発見される白血病細胞の数は初発の時とは比べ物にならない位ごく少数と言う事になる。すると、自然免疫を教育するのに足りるだけのガン細胞が得られないという事になり、なかなか難しいでしょう、との事だった。
 私の場合は発病入院時、白血病細胞は91%もあった。一方で、今後は1%未満でも白血病細胞を検出したら(検査の精度がとても進んでいるので100万個の血液細胞中に1個でも見つかれば)、再発となる。再発したとしても白血病細胞の数は少ないに越したことはない。しかし手に入れられる(自然免疫細胞教育用の)ガン細胞の数が少ないという事になる。う~ん... なんとも複雑な事になってしまう。(少ないなら培養して増やせば良いじゃないかとも思ってしまうのだが、そういうものではないのかもしれない。) まあ、まだ研究は始まったばかりだろうから、今後の研究に期待したいところだ。
※ 学術的に間違いがありましたら、教えて頂けると助かります。
※ ちなみにGVL効果(graft-versus-leukemia effect;移植片対白血病効果)というのがあるがこれは、骨髄移植で自己の血液をドナーの血液に置き換える事によって、移植されたドナーのリンパ球で自分の中に残存する白血病細胞を異物と認識させて叩かせるという方法で、これも免疫治療といえるそうだ。

2007-03-23

★☆★ はじめに ★☆★

 急性白血病(acute leukemia)と言われ2006年3月末、緊急入院。その間に自らも多発性の脳梗塞(cerebral infarction、cerebral infarct、brain infarction)で闘病(struggle)中だった母が癌(cancer)を発症し急逝。波瀾の骨髄移植を経て2007年1月退院すると一転、闘病中あれほど支えてくれていた身内から突然自分へのバッシング。最愛の母と暮らした実家を相続出来ず、離れなければならなくなった。現在通院療養中。。。独り実家で過ごしているが、敬愛する母と長年過ごした家が、今、無くなってしまうのは精神的に非常に辛い(もう少し猶予と願ったのだが)。頭の中は混乱中。。。今後どうなるのか、あと何日実家にいられるのかが全く分からない状態だが、いとおしんで過ごしたいと思う今日この頃である。

★現在の体調・ぼやき・出来事等を『生亜紫路』に、これと平行して今回の入院治療の詳細な記録を丁度一年遅れの日付でブログ『生亜紫路2006』に記していってみたいと思う。ブログ経験がなく愚痴や嘆き等を現在進行形のブログでは書いてしまいそうで不安なのだが、なるべく見苦しくならない様に綴っていきたいとは思っている。そしてこの作業を通じて少しでも混乱した頭の中を整理出来れば良いと思うのだが、どうなるかは???

 ブログ『生亜紫路2006』は自分が体験した貴重な闘病記録として残しておきたいという意図で作成した。私の病気が分かった時、インターネットであちこちを見て特に入院当初がどんな風になるのか、治療がどんな感じなのかが詳細に書かれているHPを探したが見つからなかった。きっとみんな、いきなり治療開始でそんな猶予が無かっただろう事が伺われた。ダイジェストで書かれているものには出会えたが。結果的に私も現在進行形でブログを書く余裕など無かった。しかし入院治療の記録は素人なりにかなり詳細に残しているので、それを当時の気持ちを思い出しながら書いていきたいと思っている。専門家ではないので医学的に間違った記載をしてしまう所も出てくる可能性があるので、読まれる方は、その点よくご注意願いたい。ここでは、多分次第に記載が詳細になっていく為、読むのもしんどくなるかもしれないが、興味のある部分だけ拾い読みして貰えればよいと考えている。

 一般に白血病になる原因はいまだ不明な所が多いそうである。急性白血病と言われ、いきなり病院に幽閉されて社会生活から隔離され、未体験の化学療法(chemotherapy、chemo)が始まり、闘病以外にも色々な事件が起こった。人生何が起こるか判らない。これは誰にでも言える事だろう。しかし、同じ病気に罹り、初めて受ける治療等に山ほどの不安を覚える人にとって、この記録が少しでも闘病の参考になれば幸い、皆が無事に困難な病を克服します様にという願いも込めて記していこうと思う。